海南市大野中(平成18年3月27日)
この神社は、国道370号線の大野中信号から北に入り、日方川を渡って尚も進むと春日山西麓に鎮座しています。
今では海南市に唯一残った市の天然記念物・春日万葉の森に包まれた緑濃き鎮守の杜は清々しく、階段をあがった境内はそれほど広い物ではありませんが、綺麗で落ち着きがあり気持ちの良い佇まいでした。その奥には横に広い開放的な拝殿が建ち、以前は檜皮葺と思われる本殿が優雅な姿を見せています。そして、その本殿前には2対の素晴らしい神殿狛犬が居たのですが、距離が遠いのと暗さで撮影には困難をきたしました。ズームを目一杯使って撮したのですがぶれて余りうまくいきません。諦めて帰ろうと思ったとき、折良く神主さんが帰社されました。そこで、神殿狛犬の建立年をお聞きしたところ「生憎私は分かりませんが、良かったら拝殿内に入られて撮影して良いですよ。」と優しく許可を下さり、慌てて駐車場に戻っていた夫を呼び戻し、再度撮影開始。まずじっくりと拝見してから撮影に挑んだのでした。間近で見た狛犬はすばらしく、迫力がありましたが、木目が浮き出てかなり傷んでいます。昔は屋外に出ていたのかと思いお聞きしたところ「ずっと社殿内に置かれていました。」とのこと。夫と二人、「どんなに新しくても室町時代。もしかしたらもっと古いかも?」という結論に達しました。神主さんのご好意で、今回の旅での最高の神殿狛犬と遭遇でき、至福の時を過ごす事が出来たのは、とても幸運でした。
御祭神は天押帶日子命、配祀は天照大御神、摂社には若宮八幡社「譽田別命」、粟田神社「彦國葺命」、蛭子神社「蛭子大神」、弁財天社「嚴嶋姫神、大歳廼神」、祇園社「素盞嗚尊、櫛稻田姫命」、稲荷神社「宇賀魂神」、松代王子社「松代王子」が祀られています。
天押帯日子命は第五代孝昭天皇の皇子で、古代大和豪族ワニ氏の祖にあたり、春日の朝臣彦国茸命の庶族がこの地に在住し、祖神として祀ったのが始まりです。元春日という神林より神意により吉方位を撰び、現在の地に移転鎮座したため「方位除け」の神様としてまた、「厄除け」の神様として崇拝され、海南市では唯一の「正一位」の格式を持ち、聖武天皇から代々の祈願所として朝廷の厚い保護を受けていました。
また元弘二年(1332)大塔宮護良親王が熊野へおしのびの時、当社へ御参篭になり、神主三上美作ら大野十番頭が警護し、親王を神殿にお隠し申しあげるということがあり、今も神殿三扉の一つは空位になっているということです。(詳しくは拡大写真でどうぞ。)
また神社西参道付近には摂社の松代王子社がありますが、昔この付近では、海南特産の古代墨(松煙墨)や硯などが生産され、春日神社では毎年一月二日に、この「松煙墨」を使用した「紀州古代墨席上書初会」が行われているそうです。(春日神社HP参照)
社号標 | 神社入口 |
境内から階段の参道を振り返る | 拝殿 |
本殿 | 境内社・祇園社 |
本殿階段下にいる神殿狛犬。 阿の背中部分は結構傷みが激しく木目が出ています。 吽は全くの他人親子で尾が取れています。 目が大きく、柔和で、少し太めの堂々とした体格の狛犬です。 角こそ有りませんが、鬣など神殿狛犬の技法をきちんと踏襲しています。 |
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本殿前の神殿狛犬。 こちらは下の狛犬より少し新しいと思われます。 こちらは上半身が逞しく、小顔で端正な顔つきをしています。 阿の背部に傷みが見られますが、保存状態は良いようです。 こちらも角は有りませんが、鬣など神殿狛犬のお約束事をきちんと踏襲しています。 |
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境内、参道、駐車場の木々とお花。 | |
摂社・松代王子社 | |
由緒・狛犬の拡大写真はこちらで![]() |